Q.杉原さんと「革」との出会いについてお聞かせください。
私が小学校3年生の頃、私の母の世代でもの作りがブームだったんです。エプロンやフェルトの人形を作って売ったりしていました。
その中で「レザークラフト」も流行り出し母も始めたのですが、やがて真剣に取り組むようになりました。私もその頃から母を手伝い始めました。
母が作った作品を売りに行く時、同行して隣りで手伝いをしたり。こんな感じで、私にとって「革」は幼い頃から身近な存在でした。
Q.では、本格的に学び始めたのはいつ頃でしょうか?
革の技術を本格的に学び始めたのは、高校を卒業してからです。夜間の短大で学びながら、東京に通って革職人の先生について勉強を始めました。高速バスに乗って週1回くらいのペースで3年間通いました。
あの頃はまだ何がやりたいか定まってはいませんでしたが、「何かを掴みたい」という強い気持ちがあったように思います。
短大卒業後、一度は普通に働いてみようと就職し、その後料理好きが高じて調理師になりました。スペイン料理のお店でシェフとして7年間働いたのですが、この時の経験は革作家としての活動に役に立っています。シェフが包丁を入れるのに使う革の収納ケースをご注文いただいた時、私自身の経験を生かした製品作りをすることができました。
その後、当時藤枝駅前で母が構えていた店を私が引き継ぐことになりました。何も分からないまま始めたので大変なこともありましたが、せっかく母が作った店をなくしたくない一心でした。また、「一瞬で勝負する料理」から「長く人に使ってもらえる革の魅力」に改めて気がつき、もう一度革に関わりたいと思うようにもなっていました。結婚を機にその店を畳むまで、奮闘しながら続けました。
Q.その後、いつから革作家としての活動を始められたのでしょうか?
Q.作品のデザインはどのようにして考えていますか?
やっぱり刺激を受けた時などに、デザインがパッと降りてくることがあります。外に出て人と話したり、何か見たり聞いたりする時にピンと来ることが多いですね。刺激を受けてデザインを思いつくことが多いですが、そのために特別な場所に出向くという訳ではなく、普通に生活している中で見えてくる時がある感じだと思います。
Q.「真田紐」を作品に用いているとうかがいました。
そうなんです。2年前、家具屋さんの片隅で売られていた「真田紐」に偶然出会い、その柄と色の美しさに一目惚れしてしまったんです。調べてみると真田紐とは、戦国武将の真田幸村とその父・昌幸が『強く丈夫な紐』として武具・甲冑に用いたことから「真田紐」と呼ばれるようになったとか。上質な糸を用いて丁寧に織り上げられていて、柄・風合いともに他にない美しさを持っているこの紐は、伝統工芸品としてもとても価値の高いものなんです。
丈夫で美しい真田紐と、丈夫で強い革を組み合わせたバッグを作りたい!…こう思ったことがきっかけで、【真田紐×革のバッグ】を作り始めました。革と真田紐それぞれの良さがより引き立つようなバッグになるよう心掛けています。
Q.革の干支シリーズも作られているそうですね。
はい。1年ごとに、次の年の干支を革で製作しています。
来年は酉年ですので、それに合わせた作品を製作しました。
先日ツインメッセで開催されたクリスマスフェスタに出店したのですが、その際にもご好評をいただくことができました。
Q.どのような時に「この仕事をしていて良かった」と思われますか?
私のバッグを買ってくださった方に、「何軒も欲しいものを探したけどなくて、やっとここで見つけた」と言っていただくことがあります。また、オーダーのご注文をいただいて、お客様の好きな色・好きな形で作ったものをお渡しした時には、本当に喜んだ表情を見せていただけるんです。
お客様の嬉しそうなお顔を見ると、やっぱり「作って良かったな」と思いますし、そうした瞬間に「この仕事をしていて良かった」と感じます。
Q.杉原さんはどんなことにこだわって制作されていますか?
『どこにもないバッグ』をお作りしたいというのが一番のこだわりです。お客様ごとのオーダーにお応えし、世界で一つのバッグを創りたい。そんな気持ちでいつも制作しています。
オーダーっていうとすごく高額のイメージがあるかもしれませんが、「ちょっとこの糸変えたい」とか、「もう3センチ大きいサイズにしたい」といったご要望にもお応えすることができます。小さなキーホルダーひとつでもオリジナルでお作りできます。
買いたいけど少し迷っているお客様にこうお伝えすると、「じゃあここのステッチの色を変えてくれますか」とご希望をお話しくださるんです。同じ形であればお値段も変わらずにできますし、ステッチの色が変わるだけで雰囲気もだいぶ変わります。
『世界に一つしかないバッグを制作する、藤枝一の革作家』を目指して、今後も心を込めた制作をしていきたいです。
Q.では、エフドアについてお聞きします。エフドアを利用したきっかけは?
今年初め「女性のための小さな起業講座」に参加した際、エフドアを知りました。セミナー後にそのままエフドアを訪ね、その流れで利用するようになったんです。
考えてみるとこの1年は、私にとって本当に大きな流れがありました。
「女性のための小さな起業講座」を受ける前は、やっぱり安定的にお金を得たほうが良いかと思い、アルバイトの面接を受けようとしていたんです。
それが、講座に出てエフドアを知り、相談に乗っていただくようになったことで大きく変わりました。静岡パルシェさんのチャレンジショップに出店させていただいたり、様々な出会いが広がったりと、今年の初めには思ってもいなかった展開がありました。
Q.最後に、エフドアの利用をお考えの方に一言お願いします。
私は1人で事業をしていますので、相談する相手がなかなかいないんです。そんな時ちょっとしたことでもエフドアで聞いてもらえると元気になるし、助かっています。
いつも皆さん、にこにこ優しく支えてくださっている感じで安心感がありますし(笑)
~インタビューを終えて~
杉原さんの工房は、木の温もりと素晴らしい作品に溢れたとても素敵な空間でした。
日頃から使用なさっている型抜き機やミシンを実際に拝見させていただき、杉原さんの制作にかける深い想いを改めて知ったエフドア一同。その上でまたバッグや小物などの作品を見ると、そのひとつひとつに込められた「お客様に喜んでいただきたい」という杉原さんの気持ちをより強く感じたのでした。
明るい杉原さんの笑顔と、『世界に一つだけのバッグをお届けしたい』という強い想い、そして何より確かな技術によって創られる作品の数々。これからもどんどん素敵な作品を創りだされることでしょう!杉原さん、ありがとうございました。
お店情報【LEATHER PARK(レザーパーク)】
住所:藤枝市時ヶ谷
連絡先:お問合せはこちらまでどうぞ。
杉原さんは、革職人のお母様の影響で幼い頃から革に親しまれてきました。学生時代には東京で本格的な技術を学び、時に他の仕事や結婚・出産を経験されながら、現在ではさらにその技術を高められています。
『世界に一つだけのバッグ』をお客様にお届けし、喜んでいただけた瞬間が何より嬉しいとおっしゃる杉原さん。そんな杉原さんの工房にお邪魔させていただき、革作家としての活動や作品にかける想いについてお話をうかがいました。